法令データ検索日誌

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非正規任用の地方公務員(会計年度任用職員)の身分保障について

こうした記事がありました。

誰もが知っていながら報じられない「労働者」以前に「人間」としてなんの権利も認められていない非正規公務員の現実【橘玲の日々刻々】 | 橘玲×ZAi ONLINE海外投資の歩き方 | ザイオンライン
https://diamond.jp/articles/-/273622

日本社会には、誰もが知っていながらも積極的には触れないこと(タブーとまではいえない)がいくつもある。共通項は、(1)解決が容易でないかほぼ不可能なことと、(2)それでも解決しようとすると多数派(マジョリティ)の既得権を脅かすことだ。そのため、解決に向けて努力することにほとんど利益がないばかりか、逆に自分の立場を悪くしてしまう。こうした問題の典型が「官製ワーキングプア」すなわち非正規で働く公務員の劣悪な労働環境だ。

 この会計年度任用職員制度等についてはこれまでもかなり報道で取り上げられてきたと思いますが、あちこちで注目されるのはよいことだと思います。その内容については記事のとおりだと思いますが、

2020年から会計年度任用職員制度が始まったが、それに合わせて非正規公務員への期末手当の支給が義務付けられ、約1700億円の財源が地方交付税として予算化された。ところが自治体側は、この期末手当原資を他の財源に回す予定で新年度予算を組んでしまっていた。これはふつうなら犯罪行為だが、非正規公務員は「労働者」以前に「人間」としてなんの権利も認められていないので、そのままなし崩しになったようだ。

これは、自治体が会計年度任用職員の給与体系を固めるまでに総務省が期末手当の予算を確保しなかったから、間に合わなかったのもあるだろうと思います。

ちょっと古い話なのであんまり記事が残ってませんが、例えば、この記事は2019年11月4日のものです。この時点でまだ総務省が期末手当の財源を確保するんだかしないんだか明言できていない。

「生活できなくなる」期末手当新設で月給減…非正規公務員の悲痛な声|【西日本新聞me】
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/556646.amp

 自治体側にも事情がある。行政改革で正規の人員削減を求められる中、業務負担は増すばかり。人件費の安い非正規を増やすことでしのいできた。今回、国が先導する「待遇改善」だったはずだが、開始まで半年を切っても財源確保の具体的な形は見えてこない。

 長崎県佐々町は非正規(192人)の割合が日本一高く、全体の6割強を占める(2016年総務省調査)。来年4月以降、期末手当を支給し、試算では最大約5500万円負担が増える。町の予算規模は約60億円。担当者は「国の補助があるのか注視している」。

 他の市町村からも「財源が示されないまま待遇改善と言われても、対応には限界がある」との声が漏れるが、総務省の担当者は「補助については検討中」との説明にとどめる。

12月になってやっと自治体に確保できたと伝えたんでしたっけ。

総務省は最初のうち「期末手当の支給を要請する以上当然財源は必要なので粛々と予算要求する」みたいに自治体に説明してましたけど、じきに異動で交代されたんでしょうか、そういう説明もなされなくなっていたように思います。

   

そもそものこんな非正規公務員の制度的沿革はこういうことだそうです。ひどい出来の制度ですね。

eulabourlaw.cocolog-nifty.com

ここ数年来、労働法政策の講義で話してきていることであり、先週の法政大学院での最終回でも喋ったことですが、戦後日本の公務員法制は、それなりに首尾一貫した合理的な二つの全く異なる制度を、混ぜるな危険!という警告にもかかわらず混ぜて作り上げてしまったために、世界に類を見ない得体の知れない奇怪きわまる代物になってしまったのです。

こんな訳の分からない公共部門法制をとっている国はほかに見当たりません。混ぜてはいけないものを、(法律を作ったときは混ぜるつもりではなく、入れ替えるつもりだったのに)結果的に混ぜてしまった得体のしれない空前絶後の法制度なのです。

その結果、いかなる非常勤職員と雖も公務員法上は任用に基づく公務員であり、従って戦後行政法学の脳内法理に従ってれっきとした官吏であり、それゆえ官吏としての身分保障の代わりに私法上の保護は一切奪われることになり、しかしその官吏としての身分保障なるものはどこにもないという、とんでもない世界が作り出されたのですね。本来の官吏よりも民間労働者よりも権利のない非正規官吏という代物が。

 総務省自治体に通知だしたり留意事項をだしたりしても、従ってるかどうか取り締まる機関があるわけでなし、そもそも総務省側で地方公務員制度を見てる要員がものすごく少ない気がするので、実効性が・・・?

「非正規の公務員」なんてものを制度から消滅させて、そういう場合は普通の雇用契約でいいことにして、労働基準監督署が民間と同じに監督できるようにしたらいいんじゃないかって思います。

 

どうしても公務員として任期付の一般職が必要なのであれば、任期付職員制度の要件を拡充する。任期付職員制度であれば1年毎なんて任期ではなくなりますし、給与に差をつけるのも難しくなるんじゃないかと思います。

雇用じゃなく公務員としての任用じゃなきゃダメといっても、今回、会計年度任用職員制度のために全国一律に見直しをかけるまで、ずっと雇用契約でやってきた自治体もたくさんあって、別に問題もなかったと思います。

総務省にしても非常勤の地方公務員の任用のされ方をさほど気に留めてなかったから、地方自治法施行規則の別記の歳出予算に係る節の区分や地方公営企業法施行規則の別表の勘定科目の表に、給料や手当と別に(雇用契約の対価である)「賃金」ってあったのを、会計年度任用職員制度の開始に合わせてようやく改正したくらいで(地方自治法施行規則の一部を改正する省令(平成31年総務省令第37号)地方公営企業法施行規則の一部を改正する省令(平成31年総務省令第32号))…

追記

 またこうした報道がありました。

WEB特集 期待と現実 やりがい・責任感では“もう続かない” | 働き方改革 | NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210614/amp/k10013083631000.html

ここでもまた自治体が期末手当の分の交付金を別の用途に使ったと書かれてますが、制度設計後に言われても間に合わなかったというのが実情ではないかと勝手に想像しています。

 

職員課は基本的に人件費を減らすことが成果で、外部に事業を持ってるわけでもないので、何の後ろ楯もないのに非正規職員の待遇確保を頑張る動機がないのではないかと思います。