法令データ検索日誌(2)

法令や例規(条例等)のマイナーな話題のログ。

法文を読み易くするブックマークレット

ブックマークにスクリプトを登録しておき、ブラウザでページを開いてるときにブックマークを実行することで、そのページ内にスクリプトを実行します。
丸カッコ内の背景をグレーにしたりカギカッコ内を太字にしたりするスクリプトです。これをコピペして、ブックマークのURLとして設定します。

 

javascript:(function(){document.body.innerHTML=document.body.innerHTML.replace(/(以下/g,'(<span style=font-weight:bold;>以下</span>'); document.body.innerHTML=document.body.innerHTML.replace(/(/g,'<span style=background-color:lightgray;>('); document.body.innerHTML=document.body.innerHTML.replace(/)/g,')</span>'); document.body.innerHTML=document.body.innerHTML.replace(/「/g,'<span style=font-weight:bold;>「'); document.body.innerHTML=document.body.innerHTML.replace(/」/g,'」</span>'); document.body.innerHTML=document.body.innerHTML.replace(/という。/g,'<span style=font-weight:bold;>という。</span>'); document.body.innerHTML=document.body.innerHTML.replace(/。以下/g,'<span style=font-weight:bold;>。以下</span>'); document.body.innerHTML=document.body.innerHTML.replace(/同じ。/g,'<span style=font-weight:bold;>同じ。</span>');})()


ブックマークの作り方やスクリプトの設定方法は、こちらのページを参考にしてください。
ブックマークレットの登録方法 - Qiita

ブックマークレットのリンクをそのままブックマークにD&Dできる方式にしたいのですが、はてなブログではどうやってもできないみたいです。
 

ブックマークを設定できたら、ブラウザで何かしらの法令のページを開いた状態でそのブックマークを実行する(クリックする)と、こんな感じになると思います。

 

NAMIMONOGATARI2021 国の補助金の取消し・返還について

愛知のフェス、誓約書違反なら補助金取り消し含め厳正対処=梶山経産相 | Reuters

jp.reuters.com

愛知県常滑市内で8月29日に行われた野外フェスティバル「NAMIMONOGATARI2021」では、新型コロナウイルスの感染防止対策が徹底されず、参加者らが密状態になっていたほか酒類も提供されていたとされ、愛知県や常滑市が主催者に抗議する事態になっている。このイベントには、経産省から補助金3000万円の交付が決定している。

梶山経産相は、補助金の審査に当たっては、国の基本的対処方針や地方自治体の感染防止対策に反する事業を行わない旨の誓約書を提出させているとし「事実関係の究明に乗り出している。誓約書への違反が認められれば、交付決定の取り消しも含めて厳正に対処する」と述べた。

 取り消しとなると補助金適正化法ですかね。

補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 | e-Gov法令検索

第四章 補助金等の返還等
(決定の取消)
第十七条 各省各庁の長は、補助事業者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基く各省各庁の長の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。
 各省各庁の長は、間接補助事業者等が、間接補助金等の他の用途への使用をし、その他間接補助事業等に関して法令に違反したときは、補助事業者等に対し、当該間接補助金等に係る補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。
 前二項の規定は、補助事業等について交付すべき補助金等の額の確定があつた後においても適用があるものとする。
 第八条の規定は、第一項又は第二項の規定による取消をした場合について準用する。
補助金等の返還)
第十八条 各省各庁の長は、補助金等の交付の決定を取り消した場合において、補助事業等の当該取消に係る部分に関し、すでに補助金等が交付されているときは、期限を定めて、その返還を命じなければならない。
 各省各庁の長は、補助事業者等に交付すべき補助金等の額を確定した場合において、すでにその額をこえる補助金等が交付されているときは、期限を定めて、その返還を命じなければならない。
 各省各庁の長は、第一項の返還の命令に係る補助金等の交付の決定の取消が前条第二項の規定によるものである場合において、やむを得ない事情があると認めるときは、政令で定めるところにより、返還の期限を延長し、又は返還の命令の全部若しくは一部を取り消すことができる。
 
(行政手続法の適用除外)
第二十四条の二 補助金等の交付に関する各省各庁の長の処分については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二章及び第三章の規定は、適用しない

 補助金適正化法は行政手続法の第3章を適用除外してるので、通常は取消しに先立って行う聴聞の手続もとらずに、一発取消しなのかな。

 

 

 

指定管理者による「公の施設」の使用許可の取消処分について

この報道がありました。

「法的措置も検討」表現の不自由展実行委 大阪会場許可取り消し | 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20210625/k00/00m/040/408000c

大阪市で7月に開催される予定だった企画展「表現の不自由展かんさい」について、会場となる大阪府立施設の指定管理者が使用許可を25日付で取り消したことが判明した。開催が明らかになった6月中旬以降、施設への抗議活動が相次ぎ、利用者の安全が保証できないと判断したという。府は指定管理者から事前に相談を受け、許可取り消しを容認した。

大阪府立労働センター条例
https://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k201RG00000713.html

(利用の承認の取消し等)

第四条 知事は、前条第一項の規定により利用の承認を受けたものが次の各号のいずれかに該当するときは、施設の利用の承認を取り消し、又はその利用を制限し、若しくは停止させることができる。

 センターの利用の申込みに偽りがあったとき。

 他の利用者に危害を加え、若しくは不快の念を起こさせ、又はそのおそれがあるとき。

 センターの建物又は設備を損傷し、若しくは汚損し、又はそのおそれがあるとき。

 センターの利用が暴力団の利益になり、又はなるおそれがあると認められるとき。

 この条例若しくはこの条例に基づく規則の規定又は利用の承認に係る条件に違反したとき。

 前各号に掲げるもののほか、センターの管理上支障があると認められるとき。

(指定管理者による管理)

第五条 知事は、法人その他の団体であって知事が指定するもの(以下「指定管理者」という。)に、センターの管理に関する業務のうち、次に掲げるものを行わせることができる。

 センターの利用の承認、その取消しその他の利用に関する業務

 センターの維持及び補修に関する業務

 前二号に掲げるもののほか、知事が特に必要と認める業務

2 前二条の規定は、前項の規定により指定管理者に同項各号に掲げる業務を行わせる場合について準用する。この場合において、第三条第一項中「知事」とあるのは「第五条第一項の指定管理者(以下「指定管理者」という。)」と、同条第二項及び第三項並びに前条中「知事」とあるのは「指定管理者」と読み替えるものとする。

そして、使用許可の取消しは行政法でいう「処分」、それも不利益処分に当たり、条例に基づく処分であることから、大阪府の行政手続条例条例が適用されます。

会場の「大阪府立労働センター(エル・おおさか)」が大阪府の「公の施設」にあたるため、指定管理者による使用許可の取消処分に関しては、指定管理者が行政庁にあたると思います。文理的には微妙だけど行政手続条例全般の一般的な解釈としてはそういうことになっているはず。

大阪府行政手続条例
https://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k201RG00000019.html

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 法令 法律、法律に基づく命令(告示を含む。)及び条例等をいう。

 条例等 条例及び執行機関の規則(規程を含む。以下同じ。)をいう。

 処分 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。

 

五 不利益処分 行政庁が、条例等に基づき、特定の者を名宛人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。
(略)

 

(不利益処分をしようとする場合の手続)

十三条 行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、次の各号の区分に従い、この章の定めるところにより、当該不利益処分の名宛人となるべき者について、当該各号に定める意見陳述のための手続をとらなければならない

 次のいずれかに該当するとき 聴聞

 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき。

 に規定するもののほか、名宛人の資格又は地位を直接に剥奪(画像奪)する不利益処分をしようとするとき。

 又はに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき。

 前号イからまでのいずれにも該当しないとき 弁明の機会の付与

2 次の各号のいずれかに該当するときは、前項の規定は、適用しない。

 公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため、前項に規定する意見陳述のための手続をとることができないとき。

 条例等上必要とされる資格がなかったこと又は失われるに至ったことが判明した場合に必ずすることとされている不利益処分であって、その資格の不存在又は喪失の事実が裁判所の判決書又は決定書、一定の職に就いたことを証する当該任命権者の書類その他の客観的な資料により直接証明されたものをしようとするとき。

 施設若しくは設備の設置、維持若しくは管理又は物の製造、販売その他の取扱いについて遵守すべき事項が条例等において技術的な基準をもって明確にされている場合において、専ら当該基準が充足されていないことを理由として当該基準に従うべきことを命ずる不利益処分であってその不充足の事実が計測、実験その他客観的な認定方法によって確認されたものをしようとするとき。

 納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、又は金銭の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分をしようとするとき。

 当該不利益処分の性質上、それによって課される義務の内容が著しく軽微なものであるため名宛人となるべき者の意見をあらかじめ聴くことを要しないものとして執行機関の規則で定める処分をしようとするとき。 府の機関 知事、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百三十八条の四第一項の規定に基づき府に置かれる執行機関、警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)第三十六条第一項の規定に基づき置かれる府警察若しくはこれらに置かれる機関又はこれらの機関の職員であって法律若しくは条例上独立に権限を行使することを認められた職員をいう。

 

 

(不利益処分の理由の提示)

第十四条 行政庁は、不利益処分をする場合には、その名宛人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならないただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。

2 行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名宛人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。

3 不利益処分を書面でするときは、前二項の理由は、書面により示さなければならない

なので、取消処分にあたっては、行政庁たる指定管理者が事前に聴聞を行ったのかどうか、取消処分の際にしっかり理由を示したのかどうかが気になるところです。

聴聞を指定管理者が行うのはなかなか現実的でないと思われるため、以下のように自治体が関与する仕組みにしてる場合もあるのですが、今回どうだったのかはわかりません。

指定管理者と聴聞: しがない地方公務員のメモ帳
https://bottom.at.webry.info/200604/article_15.html

以前に、
指定管理者制度⑪で、
行政手続条例と指定管理者の関係について簡単な整理をしていたのですが、その中で、
聴聞や弁明機会付与は指定管理者が行う。
聴聞の通知などに際して不利益処分の名あて人の所在が判明しない場合の公示送達なども指定管理者が指定管理者の事務所の掲示場に提示することにより行う。
聴聞における主宰者は指定管理者が指名する。
聴聞における説明者は指定管理者の職員となる。
と整理していました。
行政手続条例・規則を素直に適用すればそうなるわけですが、宮城県では、行政手続条例施行規則を改正し
http://www.pref.miyagi.jp/sibun/ken_kouhou/H1803kouhou.htm
の平成18年3月22日(水)第1742号
聴聞の主宰者として
指定管理者が行うこととされている処分に係る聴聞にあっては、知事が別に定める者
を追加しています。
恐らく、指定管理者が指名した者(例えば指定管理者の職員とか)を聴聞の主宰者とすることは適当ではないとの観点から、当該改正が行われていると思われます。

ちょっと読んだ感じでは、府が代行できる規定は見当たらなかったのですが・・・

大阪府聴聞等の手続に関する規則
https://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k201RG00000020.html

 

公務員の残業代(超過勤務手当)は予算がなかったら支給しなくてよいのか

公務員の残業代(超過勤務手当・残業手当)は予算がなかったら支給しなくてよい、という噂があるようです。

不思議ですね。国家公務員なら一般職の職員の給与に関する法律、地方公務員なら各団体の給与条例に基づき、超過した時間分の手当が支払われることになっていますよね。地方公務員の場合は、労働基準法地方公務員法第58条で適用除外される規定を除き適用されます。*1

どこに、予算がなかったら支給しない、なんて規定があるのでしょう。法令に基づいて事務を行うことが矜持の公務員が、なぜ自らに適用される法令を無視するのか。

Twitterを見てると、国でも地方でも真面目にそんなことを信じている方々もおられてちょっとひいてましたが、法令に規定がある以上、勤務した分を支給しないのは不正・違法なことであり、現に国家公務員については、河野太郎大臣がスパッと切り込んだのはご存知のとおり。

国家公務員の残業代「全額支払う」 河野規制改革相: 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE224R00S1A120C2000000/

河野太郎規制改革相は22日の記者会見で、国家公務員の超過勤務手当に関し「残業時間はテレワークを含めて厳密に全部付け、残業手当を全額支払う」と語った。麻生太郎財務相の理解を得たと説明した。「不正があれば私に言ってほしい。『やらない、やらせない、見逃さない』を徹底したい」とも強調した。

 大変心強い。今まではなんだったんでしょうね。

では地方公務員の場合はどうか。自治体の場合は各自治体が給与条例に基づき残業代(残業手当・超過勤務手当など呼び方は自治体によります)を支給してるわけですが、当然、残業してるのに残業代を支払わないサービス残業は違法です。裁判例もあります。

労働基準判例検索-全情報

争点 : 都の教育事務所職員が、超過勤務手当が一部しか支払われなかったとして支払を求めた事案(労働者一部勝訴)
事案概要 :  都の教育事務所職員が、超過勤務を行ったにもかかわらず超過勤務手当が一部しか支払われなかったとして、支払を求めた事案の控訴審である。  第一審東京地裁は、労働基準法37条に基づいて時間外手当請求権の発生を認めつつ、消滅時効が完成している期間があったとして時効の及ばない期間につき手当支給を認めた。これに対して職員が控訴、都も附帯控訴。  第二審東京高裁は、概ね原審の判断を踏襲し、職員は、現に正規の勤務時間内に完了できない業務を与えられ、そのために時間外や休日に業務を行っていたこと、時間外の勤務は公務の円滑な遂行に必要な行為であり、かつ、行わなければ繁忙時の公務が渋滞するなどの支障が生じていたこと、管理課長は超過勤務の事実を常日頃から現認し、不定期ではあるけれども業務の報告を受け、超過勤務の実績を知悉した上で職員の超過勤務を容認していたことなどを認定した。その上で、正規の勤務時間を超えてした勤務は、当該勤務を行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたものであって、使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができ、かつ、当該勤務に要した時間は社会通念上必要と認められるものであったということができるとして原審判断を支持し、都側の控訴及び職員の附帯控訴ともに棄却した。

そしてまた、「仕事が終わらないからって上長の命令がないのに残業するのは残業として認められない」という人もいるみたいですが、そんなことはないのはこの裁判例のとおり。また、判決理由を読むと、

管理課長及び庶務係給与担当者は、超過勤務の実績に見合うだけの予算措置が講じられていなかったため、超過勤務手当を抑制するため、補助簿記載の各超過勤務について、補助簿記載の超過勤務時間数の一定割合のみを命令簿に転記させ、

とあり、やはり予算措置がないことは残業代を支給しない理由にはならなかったのです。

ほかにも、インターネットにあるものだけでも自治体の残業代未払いの事例はあります。

二宮町 残業代未払いを是正 町長が謝罪 過去2年分支給へ| 大磯・二宮・中井 | タウンニュース

https://www.townnews.co.jp/0606/2018/09/28/450510.html

 二宮町が職員の時間外勤務に上限を設け、年間240時間を超えた分の時間外手当を支払っていなかった問題が明らかになったことで、村田邦子町長は9月18日に会見を開いて謝罪した。職員給与に関する条例では時間外に勤務した全ての時間に対して手当を支給すると定めているが、条例に反する「慣例」は少なくとも30年以上前から続いていたとみられる。町は労働基準法の規定に基づき、2016年度と17年度の過去2年分の未支給額3990万円を払う。

一転、割増賃金支払いへ 市職員の振休不適切運用問題 監査委員4年前に指摘 | 丹波新聞
https://tanba.jp/2020/02/%E4%B8%80%E8%BB%A2%E3%80%81%E5%89%B2%E5%A2%97%E8%B3%83%E9%87%91%E6%94%AF%E6%89%95%E3%81%84%E3%81%B8%E3%80%80%E5%B8%82%E8%81%B7%E5%93%A1%E3%81%AE%E6%8C%AF%E4%BC%91%E4%B8%8D%E9%81%A9%E5%88%87%E9%81%8B/
 兵庫県丹波篠山市職員の振替休日(以下、振休)の不適切な運用が常態化していた問題で、同市は過去2年間の勤務実態を調査し、規定期間を超えて振休を取得できていない職員に対し、割増賃金を支払う方向で検討していることが分かった。また、同市の監査委員が4年前の定期監査で問題に気づき、是正を求める指摘を行っていたことも判明。市総務課は、「今後は労使ともに制度をしっかり理解し、より適正な運用に努めていく」とした。

 振休は、あらかじめ休日だった日(時間)を「労働日」に切り替え、ほかの労働日を休日にするもの。このため日曜日に働いたとしても、「休日労働」にはならず、割増賃金は発生しない。
 一方、よく似た制度として代休があるが、こちらは突発的に休日に働くことになり、代わりに以降の労働日の中で休みを取る。もともと休日だった日に働いているため休日労働となり、割増賃金が支払われることになる。
 ただし、労働基準法では、振休であっても働いた日の週のうちに休日が取得できない場合、法定労働時間を超える勤務があったことになるため、週をまたがる振休は割増賃金の対象となる。

市職員16人に残業代未払い、100万円超も 職員逮捕きっかけで発覚、京都市長に初の是正勧告|社会|地域のニュース|京都新聞
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/375396

京都市人事委員会が門川大作市長に対し、市京セラ美術館(左京区)改築工事を担当した職員16人の時間外勤務手当(残業代)未払いなどが労働基準法に違反すると是正を勧告していたことが6日、分かった。関係者によると、職員の中には100万円以上の支払い不足があったといい、市が詳細を調査している。市人事委が京都市長に是正勧告を出すのは初めて。

 同委によると、勧告は9月8日付。5月に再オープンした市美術館の改築に関連し、昨年8月~今年1月の半年間、同館職員16人に対し、時間外労働と休日労働にかかる残業代の支払い不足があった。さらに、うち7人は月100時間未満などとする時間外勤務に関する労使協定を破り、違法に働かせていたという。

沖縄県がコロナ残業代未払い 業務急増で手当3億円不足 [沖縄はいま]:朝日新聞デジタル
https://digital.asahi.com/articles/ASNBQ5SRRNBQUEHF002.html

新型コロナウイルスに対応する県職員に長時間勤務が相次ぎ、時間外勤務(残業)手当の予算が不足して未払いが発生していることが21日、分かった。該当する職員は数百人規模とみられ、県は6月以降の残業代を支払えていない。4月から受け取っていない職員もいる。職員からは「今後、支払いはあるのか」など不安の声が上がっている。コロナ対応の中核を担う県保健医療部は本年度、残業手当を1億2574万円計上しているが、3億円程度の不足を見込んでいる。

 公営企業職員については労基署が監督してるので、もっと頻繁に是正勧告を目にする気がします。

都水道局、残業代未払い 労基署が是正勧告:時事ドットコム
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021021501023&g=eco

東京都水道局が一部の職員への残業代が未払いだったとして、新宿労働基準監督署(新宿区)から是正勧告を受けていたことが15日、分かった。同局は3000人以上いる全職員を対象に実態調査する方針だ。

伊賀市上下水道部に是正勧告 労基署、時間外労働などで3度 /三重 | 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20210223/ddl/k24/010/197000c

伊賀市は22日、市議会定例会一般質問への答弁で、2017年4月から20年6月までに3度、上下水道部が上下水道部に関する協定を超えて職員に時間外労働を行わせていたなど延べ25項目で伊賀労働基準監督署から是正勧告を受けていたことを認めた。

*1:ただし、 地方公務員法第58条第5項により、企業職員や単純労務職員以外の一般職について、職員の勤務条件に関する労働基準監督機関の職権は人事委員会か首長が行うことになっているため、労基署の監督を望めません。自分で自分を監督できるわけないんだから、この適用除外は外すべきじゃないですかね。

非正規任用の地方公務員(会計年度任用職員)の身分保障について

こうした記事がありました。

誰もが知っていながら報じられない「労働者」以前に「人間」としてなんの権利も認められていない非正規公務員の現実【橘玲の日々刻々】 | 橘玲×ZAi ONLINE海外投資の歩き方 | ザイオンライン
https://diamond.jp/articles/-/273622

日本社会には、誰もが知っていながらも積極的には触れないこと(タブーとまではいえない)がいくつもある。共通項は、(1)解決が容易でないかほぼ不可能なことと、(2)それでも解決しようとすると多数派(マジョリティ)の既得権を脅かすことだ。そのため、解決に向けて努力することにほとんど利益がないばかりか、逆に自分の立場を悪くしてしまう。こうした問題の典型が「官製ワーキングプア」すなわち非正規で働く公務員の劣悪な労働環境だ。

 この会計年度任用職員制度等についてはこれまでもかなり報道で取り上げられてきたと思いますが、あちこちで注目されるのはよいことだと思います。その内容については記事のとおりだと思いますが、

2020年から会計年度任用職員制度が始まったが、それに合わせて非正規公務員への期末手当の支給が義務付けられ、約1700億円の財源が地方交付税として予算化された。ところが自治体側は、この期末手当原資を他の財源に回す予定で新年度予算を組んでしまっていた。これはふつうなら犯罪行為だが、非正規公務員は「労働者」以前に「人間」としてなんの権利も認められていないので、そのままなし崩しになったようだ。

これは、自治体が会計年度任用職員の給与体系を固めるまでに総務省が期末手当の予算を確保しなかったから、間に合わなかったのもあるだろうと思います。

ちょっと古い話なのであんまり記事が残ってませんが、例えば、この記事は2019年11月4日のものです。この時点でまだ総務省が期末手当の財源を確保するんだかしないんだか明言できていない。

「生活できなくなる」期末手当新設で月給減…非正規公務員の悲痛な声|【西日本新聞me】
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/556646.amp

 自治体側にも事情がある。行政改革で正規の人員削減を求められる中、業務負担は増すばかり。人件費の安い非正規を増やすことでしのいできた。今回、国が先導する「待遇改善」だったはずだが、開始まで半年を切っても財源確保の具体的な形は見えてこない。

 長崎県佐々町は非正規(192人)の割合が日本一高く、全体の6割強を占める(2016年総務省調査)。来年4月以降、期末手当を支給し、試算では最大約5500万円負担が増える。町の予算規模は約60億円。担当者は「国の補助があるのか注視している」。

 他の市町村からも「財源が示されないまま待遇改善と言われても、対応には限界がある」との声が漏れるが、総務省の担当者は「補助については検討中」との説明にとどめる。

12月になってやっと自治体に確保できたと伝えたんでしたっけ。

総務省は最初のうち「期末手当の支給を要請する以上当然財源は必要なので粛々と予算要求する」みたいに自治体に説明してましたけど、じきに異動で交代されたんでしょうか、そういう説明もなされなくなっていたように思います。

   

そもそものこんな非正規公務員の制度的沿革はこういうことだそうです。ひどい出来の制度ですね。

eulabourlaw.cocolog-nifty.com

ここ数年来、労働法政策の講義で話してきていることであり、先週の法政大学院での最終回でも喋ったことですが、戦後日本の公務員法制は、それなりに首尾一貫した合理的な二つの全く異なる制度を、混ぜるな危険!という警告にもかかわらず混ぜて作り上げてしまったために、世界に類を見ない得体の知れない奇怪きわまる代物になってしまったのです。

こんな訳の分からない公共部門法制をとっている国はほかに見当たりません。混ぜてはいけないものを、(法律を作ったときは混ぜるつもりではなく、入れ替えるつもりだったのに)結果的に混ぜてしまった得体のしれない空前絶後の法制度なのです。

その結果、いかなる非常勤職員と雖も公務員法上は任用に基づく公務員であり、従って戦後行政法学の脳内法理に従ってれっきとした官吏であり、それゆえ官吏としての身分保障の代わりに私法上の保護は一切奪われることになり、しかしその官吏としての身分保障なるものはどこにもないという、とんでもない世界が作り出されたのですね。本来の官吏よりも民間労働者よりも権利のない非正規官吏という代物が。

 総務省自治体に通知だしたり留意事項をだしたりしても、従ってるかどうか取り締まる機関があるわけでなし、そもそも総務省側で地方公務員制度を見てる要員がものすごく少ない気がするので、実効性が・・・?

「非正規の公務員」なんてものを制度から消滅させて、そういう場合は普通の雇用契約でいいことにして、労働基準監督署が民間と同じに監督できるようにしたらいいんじゃないかって思います。

 

どうしても公務員として任期付の一般職が必要なのであれば、任期付職員制度の要件を拡充する。任期付職員制度であれば1年毎なんて任期ではなくなりますし、給与に差をつけるのも難しくなるんじゃないかと思います。

雇用じゃなく公務員としての任用じゃなきゃダメといっても、今回、会計年度任用職員制度のために全国一律に見直しをかけるまで、ずっと雇用契約でやってきた自治体もたくさんあって、別に問題もなかったと思います。

総務省にしても非常勤の地方公務員の任用のされ方をさほど気に留めてなかったから、地方自治法施行規則の別記の歳出予算に係る節の区分や地方公営企業法施行規則の別表の勘定科目の表に、給料や手当と別に(雇用契約の対価である)「賃金」ってあったのを、会計年度任用職員制度の開始に合わせてようやく改正したくらいで(地方自治法施行規則の一部を改正する省令(平成31年総務省令第37号)地方公営企業法施行規則の一部を改正する省令(平成31年総務省令第32号))…

追記

 またこうした報道がありました。

WEB特集 期待と現実 やりがい・責任感では“もう続かない” | 働き方改革 | NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210614/amp/k10013083631000.html

ここでもまた自治体が期末手当の分の交付金を別の用途に使ったと書かれてますが、制度設計後に言われても間に合わなかったというのが実情ではないかと勝手に想像しています。

 

職員課は基本的に人件費を減らすことが成果で、外部に事業を持ってるわけでもないので、何の後ろ楯もないのに非正規職員の待遇確保を頑張る動機がないのではないかと思います。

 

 

『小中学生に配布のタブレット 当面使用中止に 操作履歴が記録され「個人情報保護条例に違反」指摘 名古屋市』について

こんな報道がありました。

名古屋市教委、タブレット使用停止を通知 条例抵触か:朝日新聞デジタル
https://digital.asahi.com/articles/ASP6B56Y8P6BOIPE00M.html

名古屋市教育委員会は10日、市立小中学校の児童生徒に配ったタブレット端末の運用で市の個人情報保護条例に違反した恐れがあるとして、使用を一時停止することを決め、各校に通知した。保護者らの同意を得たうえで再開する考え。

 

news.yahoo.co.jp

名古屋市は、小中学生に1台ずつの配備を進めているタブレットについて、操作履歴が記録され、個人情報保護の問題があるとして、当面の間、使用を中止する方針を固めました。  名古屋市が小中学生に配布を進めているタブレットでは、児童や生徒がいつどんな操作をしたか、全てセンターサーバーに記録されます。  9日、市議会の委員会が開かれ、出席した議員から「児童や生徒に目的を明らかにしないまま操作履歴が記録されるため、市の個人情報保護条例に違反する」と指摘がありました。

個人情報保護法制はあんまり知らないので何が問題だったのかわからなかったんですが、Twitterで 

 と教えてもらいました。そこで条文を見てみると 、なるほどこの第8条第3項ですか。

 

名古屋市個人情報保護条例

(取得の制限)

第8条 実施機関は、個人情報を取得するときは、適法かつ公正な手段により取得しなければならない。

2 実施機関は、個人情報を取得するときは、本人から取得しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。

(1) 本人の同意を得ているとき。

(2) 法令又は条例に定めがあるとき。

(3) 出版、報道等により、公にされているものから取得するとき。

(4) 個人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、緊急かつやむを得ないと認められるとき。

(5) 所在不明、心神喪失等の理由により、本人から取得することが困難なとき。

(6) 争訟、選考、指導、相談、交渉、顕彰等の事務を行う場合において、本人から取得したのでは当該事務の目的の達成が損なわれ、又は当該事務の適正な執行に著しい支障が生ずると認められるとき。

(7) 他の実施機関から取得することに相当の理由があると認められる場合であって、本人の権利利益を不当に侵害するおそれがないと認められるとき。

(8) 国、独立行政法人等、他の地方公共団体地方独立行政法人(本市が設立した地方独立行政法人を除く。)、指定管理者(地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2第3項に規定する指定管理者をいい、本市の公の施設を管理するものに限る。以下同じ。)その他公共的団体等から取得することが事務の執行上やむを得ないと認められる場合であって、本人の権利利益を不当に侵害するおそれがないと認められるとき。

(9) 前各号に掲げるもののほか、実施機関が名古屋市個人情報保護審議会の意見を聴いて公益上必要があると認めたとき

3 実施機関は、本人から直接書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録(以下「電磁的記録」という。)を含む。)に記録された当該本人の個人情報を取得するときは、次に掲げる場合を除き、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。

(1) 個人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、緊急に必要があると認められるとき。

(2) 利用目的を本人に明示することにより、人の生命、身体、健康、生活又は財産を害するおそれがあると認められるとき。

(3) 利用目的を本人に明示することにより、本市の機関、国、独立行政法人等、他の地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業の公正又は適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められるとき。

(4) 取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められるとき。

 個人情報の収集は基本的に本人の同意が必要ですが、上記の第2項第9号のように個人情報審議会に諮問して公益性が認められれば同意がなくても大丈夫なはずで、インターネットで探すとGIGAスクールのために審議会(審査会)に試問してオッケーがでた議事録が見つかります。

ただ名古屋市の場合は第3項があるので、それとは別に利用目的の説明が必要なんですね、たぶん。

こうした規定は、全国で見ると230くらいの自治体の個人情報保護条例にあるみたいです。

なお上の記事のこちらのコメント

末冨芳 6/10(木) 7:55 日本大学教授・内閣府子供の貧困対策に関する有識者会議構成員

保護者への同意書を早急に取るなどの手続きも必要かもしれませんが多くの自治体ではすでに個人情報保護条例改正で適切な教育目的利用は認めており特に保護者の合意も必要ありません。

条文を見るに、同意と利用目的の明示は違って、同意を省略できる場合でも利用目的の明示は必要そうですし、それすら省略できる適切な教育目的利用というのがどこの条文に書いてあるのか…そもそもこれに関して個人情報保護条例が改正されてるという動きも見てないので、よくわかりませんでした。

GIGAスクールに関して下記のようなお知らせが出てるのは知ってますが、市町村の教育委員会がこのお知らせを見つけて個人情報保護条例の改正を首長部局に働きかけるのはちょっとむずかしんじゃないかと思います。

giga.ictconnect21.jp

 

 

『郵便投票法案にミス 衆院本会議での採決見送り』の記事に関して

こんな報道が6月8日にありました。

mainichi.jp

郵便投票法案にミス 衆院本会議での採決見送り | 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20210608/k00/00m/010/173000c

自宅やホテルで療養中の新型コロナウイルス患者が選挙で郵便投票できるようにする特例法案に誤りが見つかった。8日の衆院議院運営委員会理事会で報告され、同日の衆院本会議での採決は見送りとなった。与党側は10日の衆院通過を目指す。

 

法案は7日、衆院の特別委員会で審議入りし、賛成多数で可決されていた。関係者によると、条文の中で「この『条』において同じ」とすべきところが「この『項』」となっていた。8日になって衆院法制局が気付き、衆院議院運営委員会理事会で報告された。 jp.reuters.com

 なるほどですねーこれは議員立法(衆法)ですか。この部分ですかね。

衆法 第204回国会 32 特定患者等の郵便等を用いて行う投票方法の特例に関する法律案

 (指定都市の区及び総合区に対するこの法律の適用)
第八条 衆議院議員参議院議員都道府県の議会の議員及び長の選挙並びに指定都市地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市をいう。以下この項において同じ。)の議会の議員及び長の選挙に関する第三条第二項及び第四条の規定の適用については、指定都市においては、区及び総合区の選挙管理委員会の委員長を市の選挙管理委員会の委員長とみなす。

 検討してる途中までは第2項以降があったんでしょうね多分。

でもこの法律、この条以外で「指定都市」って文言は出てこないみたいです。

他の箇所に登場しない文言は「この条において同じ」「この項において同じ」って特定しないで、全部「以下同じ」でいいんじゃないですかね?

そもそも同じ法令の中で、同じ文言を別の定義で用いねばならない場合ってあります?

の問37に、特定の条項中の用語に限定する場合の用例がありますが、これ限定せねばならないのですかねー